東大寺ミュージアムでは「東大寺の歴史と美術」をテーマとして、常設展示および特集展示などを行っています。
常設展示ではミュージアムの本尊である千手観音菩薩像のほか、法華堂伝来の日光・月光菩薩像、奈良時代の誕生釈迦仏像や大仏開眼供養に用いられた伎楽面など、多くの寺宝をご覧いただけます。特別公開・特集展示については下記でご案内しています。
2024年10月18日(金)~2025年2月7日(金)の展示品目録はこちら。
東大寺ミュージアムでは「東大寺の歴史と美術」をテーマとして、常設展示および特集展示などを行っています。
常設展示ではミュージアムの本尊である千手観音菩薩像のほか、法華堂伝来の日光・月光菩薩像、奈良時代の誕生釈迦仏像や大仏開眼供養に用いられた伎楽面など、多くの寺宝をご覧いただけます。特別公開・特集展示については下記でご案内しています。
2024年10月18日(金)~2025年2月7日(金)の展示品目録はこちら。
令和6年10月18日(金)~令和7年2月7日(金)
天平勝宝4年(752)の4月、東大寺では7年に及んだ盧舎那大仏の仏身の鋳造が完成し、盛大に開眼供養が行われました。この時、大仏殿の前では聖武天皇が臨席するなか日本古来の舞踊のほか、中国や韓国、ベトナムの歌舞音曲が盧舎那大仏に奉納されました。まさに国際色豊かな奈良時代の文化が頂点に達した瞬間だったと言えます。
この舞踊のなかの一つに仮面を着けて音楽に合わせて劇を演じる「伎楽」があります。飛鳥時代、中国の楽舞が百済人によって日本に伝えられたものだと言われています。長い歴史の中で一度途絶えてしまったため詳細な筋書きは不明ですが、この大仏開眼会や、東大寺の法要に用いられた仮面(伎楽面)が正倉院と東大寺に多数保存されてきました。これらの面には銘文によって作者が判明するものがいくつかあります。この特集ではそのうち「捨目師」によって作られた面をまとめてご紹介いたします。名前しか知られない人物ですが、天皇も披見したであろうこの面を通して、奈良時代の工人の息づかいを感じていただければ幸いです。
〈展示伎楽面〉
師子児 1面 木造彩色 奈良時代(8世紀)
師子児 1面 木造彩色 奈良時代(8世紀)
太孤父 1面 木造彩色 奈良時代(8世紀)
酔胡従 1面 木造彩色 奈良時代(8世紀)
呉公 1面 木造彩色 奈良時代(8世紀)
※ 伎楽面の面種は東大寺の管理上の名称によっています。
なお、下記の期間、奈良国立博物館においても伎楽面の特集が行われています。是非あわせてご観覧ください。
特別陳列「東大寺伝来の伎楽面ー春日人万呂と基永師ー」
令和6年(2024)10月1日(火)~12月22日(日)
奈良国立博物館 なら仏像館 第9室
令和6年10月18日(金)~12月20日(金)
東大寺は八宗を兼学する学問寺でした。東南院はそのうち三論宗と真言宗を学ぶ院家です。貞観17年(875)に創建された東南院には公卿や法親王が入寺し、南都仏教界に大きな存在感を示してきました。この東南院を開き初代の院主となったのが聖宝(しょうぼう 832~909)です。聖宝は空海の実弟、真雅を師として出家し、また山岳で修行したことなどから、真言僧、あるいは修験道を再興した僧として有名です。しかし、その学識の基礎には密教だけでなく、東大寺で学んだ顕教である三論宗がありました。今回の特集では豪胆な個性をうかがわせる聖宝のエピソードに加えて学僧としての側面、また聖宝以後の東南院の歴史をご紹介します。
〈主な展示品〉
宇治拾遺物語 巻第十二 江戸時代・万治2年(1659)
東南院務譜 江戸時代・明和5年(1768)
国宝 東大寺東南院記 江戸時代(17世紀)
理源大師聖宝像 室町時代(16世紀)
三綱所日記 江戸時代・元禄15年(1702)
理源大師忌表白 江戸時代・嘉永元年(1848)
恵日古光鈔 第二帖 鎌倉時代(13世紀)
三論玄私考 江戸時代・天和3年(1683)
〈関連展示〉
重文 法華統略 平安時代(9世紀)
三論玄義 江戸時代・元禄14年(1701)
なお、本年のザ・グレイトブッダ・シンポジウムは「東大寺東南院と南都仏教の展開」をテーマとしています。是非ご参加ください。
日時:11月23日(土)13:20~16:30
11月24日(日)10:00~15:30
聴講無料、先着順。詳細はこちらをご覧ください。
令和6年8月31日(土)~10月17日(木)
東大寺に数多く伝わる古文書のなかに雅慶という人物の自筆の手紙がまとまって残っています。宇多天皇を祖父に持つ雅慶は高貴な身分ながら若くして出家し、仏教界で頭角を現して僧侶の最高位である大僧正にまで昇りつめます。姪が藤原道長と結婚したことから、雅慶は一条天皇の護持僧ともなり、天皇家や摂関家の仏事でも活躍しました。東大寺の別当も務めた雅慶ですが、晩年には東大寺と荘園をめぐって争うことになってしまいます。この際に東大寺や太政官とやりとりをした自筆書状を一挙に公開します。80歳を超えてもなお力強さを残す筆跡からは後に「性気勇鋭」と称された通りの人柄が偲ばれます。京都の宮中では女房文学が著されるなど雅な貴族文化が花開きはじめたころ、一方の奈良の地で繰り広げられた出来事の様子を雅慶の手紙を中心にしてご紹介します。
〈主な展示品〉
円融法皇御受戒記 平安時代・永治2年(1142)
東大寺別当統譜 江戸時代・明和5年(1768)
国宝 大僧正雅慶書状(3月27日付) 平安時代・寛弘9年(1012)
国宝 大僧正雅慶書状(3月27日か) 平安時代・寛弘9年(1012)
国宝 雅慶政所下文案(3月30日付) 平安時代・寛弘9年(1012)
国宝 大僧正雅慶書状(4月24日付・4月21日付) 平安時代・寛弘9年(1012)
国宝 大僧正雅慶書状(4月23日付) 平安時代・寛弘9年(1012)
国宝 大僧正雅慶書状(6月15日付) 平安時代・寛弘9年(1012)
〈関連展示〉
細字法華経 平安時代(10~11世紀)
重文 願文集 平安時代(11~12世紀)
※展示箇所は藤原資業作・藤原頼通室為先父中書王供養伽藍願文 長暦4年(1040)
令和6年7月18日(木)~8月30日(金)
地蔵菩薩は地獄から人々を救い出してくれる仏さまとして平安時代の後半頃から信仰が広まりました。その姿は他の仏菩薩と異なって髪を剃った僧侶のようであり、端正な顔立ちの像が多いことが特徴です。現在でも路傍にたくさんの「お地蔵さん」が祀られるように、もっとも我々に身近な仏さまと言えます。それゆえに特定の地蔵像が霊験によって信仰を集めることもありました。奈良には中世以来、多くの有名な地蔵像が知られていますが、東大寺の中にも著名な像が複数伝えられています。7月から8月にかけての地蔵盆の季節に、東大寺に伝わる地蔵菩薩を紹介します。
〈主な展示品〉
重文 泰山府君坐像(念仏堂伝来) 鎌倉時代・嘉禎3年(1237)
重文 閻魔王坐像(念仏堂伝来) 鎌倉時代(13世紀)
重文 地蔵菩薩坐像(法華堂伝来) 鎌倉時代(13世紀)
重文 地蔵菩薩立像(知足院伝来) 鎌倉時代(13世紀)
地蔵菩薩像(真言院伝来) 南北朝~室町時代(14~15世紀)
証菩提院地蔵縁起 江戸時代・正徳5年(1715)
※ 公慶堂伝来 快慶作地蔵菩薩立像は出陳されません
〈関連展示〉
重文 大乗大集地蔵十輪経 巻第一 奈良時代(8世紀)
重文 大乗大集地蔵十輪経 巻第四 奈良時代(8世紀)
令和6年5月16日(木)~7月17日(水)
夏安居は僧侶たちが夏の一定期間、一箇所に集住し研鑽しあう仏教の習慣です。中世の東大寺戒壇院においても夏安居が営まれていました。当館では昨年の夏に安居の始まりの儀式である「結夏」儀礼に注目した特集を開催しましたが、今年は第2弾として安居の最終日に行われる自省の場である「自恣」をご紹介します。旧暦4月から7月にわたる研鑽期間を終えるにあたり、僧侶たちは自らの行いを振り返り、今後の修行の決意を新たにしました。夏が始まるこれからの季節に、僧侶たちの反省会の儀式をご紹介いたします。
〈主な展示品〉
重文 四分律刪繁補闕行事鈔 巻上四(泉涌寺版)
鎌倉時代・建長4年(1251)〔東大寺聖教のうち)
重文 東大寺要録 巻第九 雑事章のうち東大寺授戒方軌
室町時代(15世紀)
重文 銅水瓶 鎌倉時代・嘉元3年(1301)
重文 布薩盥 室町時代・応永34年(1427)
手巾掛 江戸時代(17~19世紀)
国宝 戒壇院勧進帳 室町時代・享徳元年(1452)
羅雲講式 室町時代・享徳元年(1452)
羅雲尊者像 室町時代・文安3年(1446)
県指定 菜桶 室町時代・応永2年(1395)
県指定 汁桶 室町時代・応永2年(1395)
〈関連展示〉
重文 羯磨 奈良時代(8世紀)
重文 弥沙塞羯磨本 奈良時代(8世紀)
令和6年3月19日(火)~5月15日(水)
今年、2024年は弘法大師空海の生誕1250年目にあたります。日本に密教の奥義を伝え真言宗を立教開宗したことで名高い空海は、唐への留学の直前に東大寺戒壇院で得度授戒したと伝えられ、また帰朝後は嵯峨天皇の勅命により東大寺内に灌頂道場(現在の真言院)を建立するなど、東大寺とも深い関わりがありました。東大寺では現在でも毎年4月21日(旧暦の3月21日)の空海の忌日に真言院において御影供を行っています(非公開)。今回はこの節目の年を記念して、東大寺と空海、また中世から近世にかけての真言院の歴史をご紹介します。
〈主な展示品〉
重文 御請来録 室町時代・長享3年(1489)〔東大寺聖教のうち)
重文 弁顕密二教論 上巻 鎌倉時代・暦仁2年(1239)〔東大寺聖教のうち〕
真言院再興略記 桃山~江戸時代(16~17世紀)
真言血脈 江戸時代(17~18世紀)
徳川家康朱印状案(真言院宛) 江戸時代(17世紀)
真言院境内図 江戸時代・寛政9年(1797)
弘法大師像 江戸時代(17~18世紀)
弘法大師像(日輪大師) 室町時代・寛正2年(1461)頃
〈関連展示〉
重文 金剛頂経 巻上 鎌倉時代・正応4年(1291)〔東大寺聖教のうち〕
重文 大日経 住心品 江戸時代・万治3年(1660)〔東大寺聖教のうち〕
重文 伝法灌頂作法次第(金剛界・胎蔵界・三昧耶戒)
室町時代・天正2年(1574)〔東大寺聖教のうち〕
令和6年2月10日(土)~3月18日(月)
お水取りの名で親しまれている東大寺の修二会(しゅにえ)は奈良時代以来、毎年一度も途絶えることなく現在まで続いている稀有な法会です。十一面観音を本尊とし人々の犯した罪を懴悔して、五穀の豊穣や世の中の安穏などを祈るこの法要は、春を迎える前の旧暦2月(現在は3月)に厳修されます。この修二会の会場となるのが「二月堂」です。一般の仏堂とは異なり、二月堂はその名が示すとおり修二会を修するための堂宇として発展してきました。修二会が行われる空間は信仰の高まりに応じて、次第に増築され現在の姿になったと考えられています。まさに古代以来、法要とともに発展してきた建築であり、行法の原初形態や変遷の過程を伺うことのできる特異な建物と言えるでしょう。
この二月堂は東大寺を襲った二度の兵火を耐え抜きましたが、江戸時代前期に失火により焼失してしまいます。幕府の援助により素早く再建された現在の二月堂は焼失前の姿が忠実に再現されており、修二会を継続し続けようとした人々の強い意思がうかがえます。今回は二月堂が現在部分的な修理が行われているのにちなみ、再建以後の二月堂について、修二会を支え続けてきた法要空間と修理の歴史の一部をご紹介します。
なお、期間中、奈良国立博物館においても特別陳列「お水取り」展(2月10日[土]〕~3月17日[日])が開催されます。あわせてご観覧されますとより深く修二会をご理解いただけます。両館にご入場の方には特製散華をプレゼントいたします。(※奈良国立博物館会場は会期終了が一日早いのでご注意ください)
〈主な展示品〉
二月堂縁起絵巻 下巻 室町時代(16世紀)
二月堂再建地割図(梁行) 江戸時代・寛文7年(1667)
滑車(二月堂内陣戸帳用) 江戸時代・寛文9年(1669)か
東大寺境内図 江戸時代(18世紀)
東大寺年中行事記(元文三年)江戸時代・元文3年(1738)
棟札(宿所、湯屋、仏餉屋) 江戸時代(18~19世紀)
令和5年12月25日(月)~令和6年2月9日(金)
令和6年(2024)は辰年です。時や方位を表す「十二支」には古代中国から鼠牛虎兎…と動物が当てられ、現在でもアジア世界を中心になじまれています。皆さんも自分の生まれ年の動物が何かご存知の方が多いでしょう。このうち、「辰」の龍は十二種のうちで唯一、現在でも実在が確認されていない動物です。しかし、蛇のような長い体に鹿のような角、鋭い牙と爪をもち雨や水を司る龍のイメージは古来多くの人々が共有してきました。
インドで生まれた仏教にも龍は取り入れられ、仏法を守護する存在となりました。仏教が次第に中国に広まると、中国固有の神仙思想における龍と交じり合い、それが日本にもたらされます。怒らせると恐ろしい存在から、恵の雨を降らせるありがたいものまで、その性格は様々です。東大寺の宝物にも各時代の色々な龍が見られます。盧舎那大仏が開眼された天平勝宝4年(752)も辰年でした。それから1272年、107回目の辰年も飛翔の年となることを祈願し、東大寺に伝わる龍を紹介します。
〈主な展示品〉
重要文化財 十二神将像のうち辰神 平安時代(12世紀)
重要文化財 舞楽面(陵王) 鎌倉時代・正元元年(1259)
観音龍虎図 室町時代(15世紀)
善女龍王図 江戸時代(19世紀)
一筆画龍図 近代(20世紀)
東大寺は奈良時代に盧舎那大仏を本尊とする国家の中心的な寺院として誕生しました。その初代の「別当」(寺務の総裁)となったと伝わるのが良弁(ろうべん)僧正(689∼774)です。良弁僧正は聖武天皇が抱いた仏教で国を治めるという想いを支えて伽藍整備に尽力したため、聖武天皇や行基・菩提僊那とともに東大寺の「四聖」の一人に数えられています。
本年は良弁僧正が宝亀4年(774)に85歳で亡くなられてから1250年目の御遠忌にあたります。東大寺ミュージアムでは特別展示を行い、良弁僧正の生涯が東大寺のなかでどのように伝えられ、学恩が顕彰されてきたのか、その歴史をご紹介いたします。この特集が良弁僧正の遺徳を偲ぶための縁(よすが)となりましたら幸いです。
前期 令和5年10月1日(日)~11月16日(木)
後期 令和5年11月17日(金)~12月21日(木)
特別展示「良弁僧正と東大寺」のなかで特別に実忠和尚(じっちゅうかしょう)像をミュージアムにて公開いたします。実忠和尚は良弁僧正の弟子で、お水取りを始めたと伝えられています。このお像は普段、開山堂にいらっしゃいますが、このたび良弁僧正御遠忌にあわせ、特別にミュージアムにお移りいただきます。前期後期通してご拝観いただけますので、ぜひこの機会に足をお運びください。
〈特別公開〉実忠和尚像 撮影:佐々木香輔